後期研修(精神科専門医研修)
教室の特徴
金沢大学付属病院神経科精神科は、2019年に開設110周年を迎えた歴史ある精神医学教室です。北陸の中核病院として多数の関連病院と連携し、様々な精神医療を担っています。児童精神医学の臨床・研究を強化しており、2008年からは子どものこころの診療科が独立しました。
2019年5月より菊知充が当教室教授に就任致しました。装いも新たに、より一層臨床・研究・教育の充実発展に尽力致します。
金沢大学附属病院連携施設
精神科専門医研修
プログラムについて
プログラムの詳細は、日本精神神経学会 精神科専門研修プログラムから、「金沢大学附属病院連携施設 精神科専門医研修プログラム」と検索してください。
概要
卒後3年次から5年次の3年間で、専門医や精神保健指定医取得に向けた多施設での研修を行います。
専門医、精神保健指定医取得後は、ライフスタイルに合わせた各関連施設でそれぞれの専門領域への従事や研究などを行います。
なお、卒後初期臨床研修では大学病院での神経科精神科専攻プログラムを選択することができます。この場合、2年間の研修中に11ヶ月精神科での研修を行うことが可能です。早期からの研修により、より早い臨床経験を積むことはもちろん、余裕を持って精神保健指定医、専門医取得に向けた準備ができ、また早期からの研究参加も可能です。詳細は卒後研修係までご相談ください。
研修の流れ
後期研修医(専攻医)1年目(卒後3年目)では、金沢大学附属病院または精神科単科病院での研修を行います。チーム制で屋根瓦方式の指導を受けることができ、主に入院患者の診断、治療を行います。また外来初診の予診にも従事し、精神科初診診療および将来の外来診療に向けた研修を行います。
専攻医2-3年目(卒後4-5年目)では、総合病院、精神科単科病院、大学病院の三種について、経験病院に偏りがない様に配属されます。総合病院では外来や病棟業務を、精神科単科病院では外来や病棟及び精神科救急を、大学病院では外来や病棟、専門医取得に必要な学会発表を、それぞれ指導医の指導の下で行います。研究に従事する専攻医は、後期研修2-3年目までに大学院に入学することが多いです。後期研修2-3年目までには精神保健指定医及び専門医に経験が必要な症例が集められます。
後期研修医4年目以降は引き続き総合病院、精神科単科病院、大学病院のいずれかで研修を行います。このころには屋根瓦方式を採用している病院においては、専攻医1-2年目の指導を行いながら、指導医とともに精神科診療に従事することとなります。特定医師や精神保健指定医の取得時期であり、精神保健福祉法の理解はもちろんのこと、児童精神医学、老年精神医学、総合病院精神医学、司法精神医学、研究といったサブスペシャリティを見据えた人生選択もこの時期に考えることが多くなります。各々のライフスタイルに合わせた研修生活を送ります。
研修プログラムの特徴
- 大学病院では当教室の特色の一つである児童精神医学や、摂食障害や器質性精神障害といった、身体合併症を伴う精神疾患を多く診ることができます。また統合失調症や気分障害など一般的な精神疾患の治療も幅広く行っており、臨床医として偏りのない幅広い疾患を経験することができます。
- 大学病院の病棟業務はチーム制で、いわゆる屋根瓦方式の教育を取り入れており、効率的な臨床研修やサポートの充実、昨今問題になっている医師の働き方改革にも対応し、若手医師に業務が集中しすぎないような体制を構築しています。
- 教室に多くの研究実績があり、研究やエビデンスに基づいた医療が学べます。大学病院では週に1度医局会を開催しており、多数の症例について触れる機会があります。主治医ではない症例についても繰り返し学ぶ機会が設けられてあり、自然と短期間に診療経験が身につくような工夫を施しております。
- 大学病院以外の研修病院においても、多くの関連病院が金沢市からの通勤圏内にあり、ライフスタイルに大きな負担をかけずに様々な精神科の役割を学ぶことができます。
- 将来興味のある専門領域に合わせ研修病院先や研修内容を調整することができます。児童精神医学、老年精神医学、総合病院精神医学、司法精神医学など、様々な精神科の専門領域を担う病院が研修病院にあり、早期から関連病院での専門性の高い研修を受けることができます。
- ライフスタイルやキャリアアップに合わせた柔軟性の高い研修が可能です。また業務内容や研修内容の偏りが生じないようなシステムを構築しており、医局員が無理のない生活を送れるように配慮しております。入局員には女性医師も多く、様々なライフスタイルの中での研修を送っており、そのような実績が多くあります。
研修医の声
前田 耀士2020年卒
金沢大学精神科ではチーム制で診療が行われています。私が精神科に入った直後は治療方針の決め方、患者さんへの説明、医療スタッフとの連携、病棟業務等わからないことだらけでしたが、チーム内で常に相談できる環境であったので、安心して働くことができました。医局は全体的に若い先生が多いです。上級医とも年齢はそこまで離れておらず、優しくフランクな先生ばかりだったので気軽に相談することができました。毎年多くの入局者がいることも特徴の一つだと思います。同期が多いと仕事をカバーし合えたり、相談や情報交換をしやすかったりと良いことが多いです。また、精神科専攻医にとっては指定医、専門医を取得することが大きな目標になります。金沢大学では毎年複数合格者が出ており、指導体制は整っています。レポート作成などで指導を受ける際にも心強いと思います。
精神科の患者さんの症状や抱えている問題は、人によって変わるため、治療のゴールはそれぞれ違います。そのため、患者さんを主体として、家族や医療スタッフとコミュニケーションを取りながら、その人にとってのベストの方法を探していくことになります。治療が良い方向に向かっているのかわかりづらいことも多く、難しいと感じることもありますが、その分やりがいもあります。患者さんの症状だけでなく、今後の生活や人生についても一緒に考えていくこともあり、そこに面白さを感じます。是非多くの皆様と一緒に働けることを願っております。
北村 浩司2018年卒 医学博士課程2年
社会人からの再受験組で、他県医学部に編入して、地元の石川県で駆け出し中年精神科医となった男です。
当医局ならびに当専攻医プログラムについて他大学出身者であること、再受験組であることの二つの視点からお話ししてみたいと思います。
診療科を問わず、他大学に入局するというのはとても心許ない感じがしますが、金沢大学精神科は自由な雰囲気があって、出身大学にかかわらず指導や教育機会が公平で十分にあると思います。積極的であれば国内留学を含め、キャリアパスもかなり自由に設計できます。医局の大先輩方も親切な先生方が多く、配属先で受けるその親切心にいつも感動してしまいます。年齢によるハンディキャップを感じることもこれまで一度もありませんでした(上級医からの年齢による多少の遠慮を感じることはあっても)。
医者になってつくづく思うことですが、医者とは個人事業主のようなものであり、どこかの集団に所属していればなにかが保証されるわけではなく、職業能力獲得のための不断の努力が求められるわけです。究極的にはクライエントに対して提供できるサービスの付加価値をどれだけ大きくできるか、その機会が十分にあるか、そういう視点でみると、ここはとても快適な環境を提供してくれると思います。
安本 眞衣2018年卒
精神疾患は治療も含めて、その土地の文化や宗教、社会情勢などの影響を多大に受けるものであり、精神症状のみならずそれぞれの患者さんの日常生活上の支障や対人関係上の問題も治療の標的となります。日本においては、精神疾患と“精神的な弱さ”が関連づけられることが多く、根強い根性論が精神疾患への偏見を助長させているようにも見えます。子どもの頃からとにかく我慢することや努力することが求められ、休むことや手を抜くこと、逃げることは悪だと教わります。しかし、果たして本当にそうでしょうか?私が精神科医を志した理由の一つは、「精神的な弱さとは果たして何なのか?」ということを学び、根拠のない根性論ではなく医学的な視点から正しい精神衛生を普及させたいと考えたからです。精神科の研修先を探している時に菊知教授の教授就任のあいさつを拝読し、「我々が一人一人の患者さんに誠実に向き合い続けることで、いつかバタフライ効果のようにこの世の中の精神疾患への偏見がなくなることを望む」という旨の記載に感銘を受けました。金沢大学精神科の研修プログラムの概要について当時の医局長から説明を受ける中で、漠然としていた専攻医としての自分の姿がより具体化し、精神科医として重要な最初の一歩を踏み出すならこの環境が望ましいと感じたことから入局を決めました。
年齢に縛られず精神科診療を必要とする全ての人の役に立ちたいと考え、入局時に児童青年期の診療にも関心があることを伝え、1年目から子どものこころの診療にも携わらせていただいています。他にも、児童養護施設の巡回相談や医療観察法病棟での研修などを経験させていただき、若手の学びたいという意欲に対して最大限の配慮をしていただける環境にあることに日々感謝しております。教授や医局長をはじめ上級医の先生方はみなさんとても優しいので、気軽に質問したり相談したりできて、医局内はいつも和気藹々としています。もちろん、指導面でも手厚いサポートが期待できます。私を含め専攻医も数多く在籍しており、専攻医同士の横の繋がりも広がってきています。基幹病院以外に、関連病院を石川県、富山県に複数有しており、症例は十分に確保でき取り合いになる心配はありません。当医局には専攻医も含めて女性も多く、また男女問わず家事や育児と仕事を両立されている先輩方がほとんどです。そういった意味でも、それぞれの目的や環境に応じて、研修内容に関して色んな選択肢を用意してもらえています。
一人でも多くの医学生、研修医のみなさんに精神科の奥深さや魅力を感じていただき、少しでも当研修に興味を持っていただけると嬉しいです。ぜひ一度、見学にいらしてください。
姥浦 一太2016年卒
私は金沢大学附属病院の精神科に入局してから5年目になりますが、これまでの所感をつらつらと述べたいと思います。
まず、症例に関しては幅広く経験できます。精神科単科病院、総合病院、大学病院を満遍なく経験できるため、経験できる症例に偏りがありません。統合失調症や気分障害、認知症などの一般的な精神疾患に加えて、児童思春期症例や摂食障害、身体合併症を伴う精神疾患など、一つの病院だけでは経験できない症例を数多く担当できます。また、急性期病棟や慢性期病棟、入院管理、外来業務など精神科のキャリアにおいて経験すべき症例を万全のサポート体制で経験できます。エビデンスに基づいた診療はもちろん、患者様の環境・退院調整やインフォームド・コンセント、書類の作成など疾患の知識以外のことについても丁寧に指導いただけています。悩むような場面でも一人で放置されることなく、疑問点が生じた際は気軽に相談できる環境が整っています。カンファレンスは定期的に行われており、若手も積極的に意見を述べやすい印象です。一つの考え方にとらわれず、様々な角度から症例を検討できます。
精神科のキャリアにおいて重要な資格は精神保健指定医と専門医だと思います。特に精神保健指定医は外来・病棟業務をこなすにあたって必須の資格です。これらの資格のサポートも万全です。資格取得に必要な症例や知識、レポートの添削などについて細部にわたってサポートしていただけていると感じています。
また、私は金沢大学附属病院の特別枠で精神科に入局しました。今後のキャリアについて適宜相談にのっていただけており、不安を感じることなく仕事を継続できています。毎年のように特別枠の先生が入局しているため、万が一特別枠関連で心配なことが生じても相談しやすい環境だと思います。
精神科での仕事に興味のある先生は、金沢大学附属病院精神科への入局を是非ご検討ください。多くの先生方と共に働けることを楽しみにしております。
細川 由紀子2017年卒
金大精神科は自由な雰囲気で指導体制も整っている医局です。私のいる病院では女性医師が約2-3割在籍しており、家庭と両立している先生も多くいます。
臨床、研究共に盛んで、様々な分野の専門家がいるので、自分の興味を持つ分野の理解を深める機会や環境にも恵まれています。
私は2児の母ですが、仕事と家庭の両立でツラい時などには上級医が相談に乗ってくれます。
プライベートに限らず、日々の臨床疑問や症例報告なども相談できる心強い上級医がたくさんいます。カンファレンスも業務時間内に行われ、チーム制の主治医なので、子供が熱を出した時にも安心して迎えに行くことができます。
精神科は慢性期の患者さんもいますが、急性期の方も多く、薬物療法と共に住居や就労支援などの環境調整を行い社会復帰を果たす方も多くいます。社会復帰され元気な姿を見せていただける時に一番のやりがいを感じます。疾患と社会背景を総合的に考える点が精神科の魅力と思っています。
金大精神科に興味を持たれた方は、是非一緒に働きましょう!
宮下 翔伍2017年卒
私が金沢大学精神科の研修プログラムを選んだ決め手は2点ありました。1点目は石川県出身ということもあり、まず地元石川中心で研修ができ、その後も北陸で勤務するに当たり十分な経験を積める場所で研修をしたかったという点でした。金沢大学のプログラムでは、典型的な精神疾患の症例はもちろん、指定医や専門医取得における児童症例など集まりにくい症例なども豊富に経験できることや、総合病院、精神科単科病院によらず様々な労働環境を経験できることなど、現在の研修プログラムは十分な内容となっていると感じられました。また、金沢大学附属病院の神経科精神科では初期研修医の時期も4ヶ月まわらせていただいたのですが、丁寧に指導いただいた先生がたくさんいらっしゃったことも大きかったと思います。
その他にも、当院での研修医実習期間中に興味深い症例を見させていただいたことなどを通して、今振り返ると病院自体に対する愛着もあったように思います。
研修プログラムにおいて私が重要だと思っている点は、前述したとおり第一に指定医、専門医に必要な症例が十分に経験できるか、次に実務経験、学習の面でのサポートが充実しているかの2点である思っています。前者においてはすでにほとんど不足なく経験できており、またなかなか経験しにくい症例の場合は専攻医内で過不足なく担当させていただけるなど、症例の豊富さや多彩さのみならず、将来のスキルアップにつながることを優先してでき、専門医取得までのサポートを十分にしていただけていると感じます。
また実務経験、学習の面でのサポートですが、これは当院の研修プログラムを選んでよかったと一番に思える点です。エビデンスを確認しつつ診療を行うことはもちろん、患者さんの環境調整や病状説明、情報提供など、経験を積まなければなかなか知識だけでは太刀打ちできない内容についても、熱心に指導いただけていると感じています。この1年で十分な診療ができるようになった、とはおいそれとは言えませんが、これからの診療に当たって、充実した土台作りができた1年であったと思います。
精神科は専門性が高く、他科の先生方から協力や助言を求められることが多い科です。それほど他科からすると分かりづらい、手が出しづらい領域だとも思います。ましてや、患者さんからするとより難解な領域に映るのでは、と思っています。その点、診療がうまくいかないととことん拗れることがある科であるとも思います。もしかすると皆さんにもそういう先入観を持たれている方がいるかもしれませんが、逆に疾患教育などを含めて診療がうまくいった時の充実感は格別のものがありますし、精神科の醍醐味の1つだとも思います。うまくいくかどうかを分けるのは、いろんな先生方の意見を聞くことができるかどうかが大きな要因の1つだと感じていますし、当院の研修プログラムは十分な環境があると感じています。そういった環境の中で、たくさんの先生方と一緒に働くことができることを願っております。
湯淺 慧吾2017年卒、医学博士課程1年
元々脳科学と精神疾患の関連について興味があり、精神科を選びました。実際に働いてみると、客観的な所見が少ない分野で経験もごく浅いため、難しいと思うことも多いですが、患者さんが良くなっていき、家庭や社会に復帰する姿を目にするのにはやりがいを感じています。大学病院は身体疾患を合併した症例も多く、他科から信頼されるような精神科医になることが目標です。
当科では専攻医と上級医がチームになって診療に携わっています。医局全体の雰囲気としてはとてもフランクで風通しも良く、働きやすい環境です。また、自由な雰囲気で、研究している方もいれば、趣味を楽しんでおられる方もいて、ライフワークバランスは抜群だと思います。
少しでも興味のある方、人生に迷われた方など、ぜひ一度見学をお勧めします。
相馬 大輝2016年卒 医学博士課程3年
私が精神科を、そして出自にゆかりのないこの地での入局・博士課程進学を選択したのは、たまたまです。ですが、およそ2年を経過した現在から振返り、自身の一連の選択に心から満足しています。
日々様々な悩みや困難さを抱えて訪れる人々に対し、その抱える問題を整理し、画像や数値で測定できないがゆえの不確かさを許容しながらも最適解を提案していく臨床の面白さと奥深さ。そして、そんな不確かさを一つ一つ確からしいものへと象っていく研究の真摯さと達成感。いずれも他科を選択していれば味わうことのなかった妙味だと、日々噛み締めながら生活しています。
そんな精神科の中で金沢大学を選択したのは、ひとえに発達障害という研究内容ゆえです。
現代では患者と分類されてしまう当科の人々の潜在的な能力と可能性について、将来もっと評価され活用されるような土壌が醸成されれば社会にとって大きなプラスとなると私は常々考えています。それに資することができる現在の研究は立派なライフワークとなりつつあります。
そうして入局した金沢大学精神科ですが、先輩も後輩もみな一芸に秀で一癖も二癖もある曲者ばかりで、それでいて分け隔てなく和気藹々としており、私のような変わり者・流れ者も本当に伸び伸びと過ごさせてもらっています。
一芸に磨きをかけるもよし、興味を追求するもよし、余暇をしゃぶりつくすもよし、のんびり過ごすもよし、取りうる選択肢は様々です。興味があればぜひ!
奥田 丈士2016年卒 医学博士課程2年
私が当院の精神科研修プログラムを選んだ理由としては自由で寛容な雰囲気が大きかったと思います。いろいろ悩んだ末の結果でしたが、「来るもの拒まず、去るもの追わず」といってくださったことが決め手だったような気もします。実際に入局した印象は本当に様々な趣味趣向をもった方が多く、医療以外の面でも刺激をえられました。
臨床面では大学では多様な疾患や社会背景の方がいらっしゃいますが、上級医の先生とカンファレンスを行ったり、病状説明の準備を共に行ったりと教育体制が整っており大変勉強になりました。
また医局人事に関してはきっちり希望を伺ってくださり、相対的に見て働きやすい環境です。
当プログラムではやりたいことに答えてくれる環境が整っていると感じます。是非一緒に自分の目標に向かい頑張りましょう。